俳優である父、映画や音楽にも興味があった「おふくろ」「おじさん」「おばさん」が身近にいた鈴木慶一は、「大人の文化」にひと足早く触れる機会に恵まれた少年時代を過ごした。育った街は東京で最も南に位置する大田区、かつては漁業を営む家も多かった東京湾岸の羽田エリア。後にともに演奏することになる細野晴臣や松本隆が育った港区、鈴木茂や高橋幸宏の世田谷区・目黒区とはまた異なる「東京ローカル色」が強いエリアである。独特な環境のもとで培った音楽の素養、そこから一歩踏み出すきっかけとなった1969-70年の日本のロック転換期。はちみつぱい〜ムーンライダーズでデビューに至る直前までの、鈴木慶一の文化漂流記。