歌い出しだけで、リスナーの心を鷲づかみにする深く、美しい歌声。その圧倒的な力量から、南佳孝さんは自他共に認める歌の天才少年――ナチュラル・ボーン・シンガーだったのではないかと想像していた。しかし、歌への自意識の芽生えについて投げかけた質問に対する、ご本人の答えは「僕は子供の頃、本当に歌がヘタクソで、音程もとれなかった……」。ビートルズに影響を受けたバンドではドラムを担当し、その後ジャズ・ギタリストに師事をし、最終的にはソングライターに目標を定める。ジャズ喫茶でアルバイトをしながら、ジャズを浴びるように聴き続ける。ロックのフィールドにいた同世代の東京出身ミュージシャン達とは異なる道を進みながら、デビュー時には合流をして名盤をつくり上げるまでのストーリー。「ソングライター」を目指した若者に「シンガー」としての才能が開花し「シンガー・ソングライター」が誕生するまでの彷徨。